鳥取県内における同和問題の現状と課題

鳥取県人権連事務局長 田中 克美

 

〔はじめに〕

鳥取県は県内の自治体が運動団体の窓口一本化の先進県と言われてきた。また、部落解放基本法制定要求実行委員会が全自治体で結成された県であった。この鳥取県内において、県でも、市町村でも、それぞれ温度差はあるものの、かつての同和対策、同和施策の見直しが始まっているという点で共通している。この見直しの現状の紹介、その背景にあるもの、教育・啓発を含めた人権問題の取り組みを基本的人権確立の方向にすすめるための課題について述べる。

 

〔1〕  県内自治体で見直しがすすむ同和対策、同和施策

(1)鳥取市、倉吉市、大栄町に見る

いま鳥取県内自治体でいちばん変化がいちじるしいのが鳥取市である。市としては2007年度から一般対策への移行を表明した。そして、この基本的な方向に沿って、国保料や保育料の減免など20数事業が廃止された。また、同和保育の指針も廃止され、同和教育では、同和教育予算が大幅に削減され、20068700万円あったものが、2009年度には2005万円に大きく減少している。また、「地区進出学習」が廃止された。かつて1500万円あった部落解放同盟への団体補助金が昨年度からゼロ計上となった。

県中部の倉吉市では、固定資産税減免や保育料の同和減免が廃止され、ここでもかつて450万円ほどあった部落解放同盟への補助金がここ数年で半分の220万円に減っている。倉吉市は部落解放同盟との交渉は取りやめにした。進学奨励金も廃止した。

倉吉市に隣接する北栄町では、2007年度に町議会の有志が同和施策の予算の縮減を町長に申し入れるという、県内の他の自治体ではかつて例のなかった動きが起こった。議会の意向を受け、町も事業見直しをすすめ20数事業が廃止されている。町の資料でいくつか紹介すると、「進学奨励金給付制度は平成21年度まで代替措置等移行準備期間とし22年度に廃止」「住民税の減免制度は平成20年度から廃止」「固定資産税の減免制度は地区外転出者については平成20年度から対象外とする」「保育料の減免制度は平成20年度から所得制限を導入し、負担増の激変緩和措置を講じながら22年度より廃止」─こういう見直しが25項目にわたってあげられている。

 

(2)見直しの背景にあるもの

こうした補助金や個人給付事業の廃止、あるいは縮減は、鳥取市や倉吉市、北栄町にとどまらず、県をはじめ多くの自治体ですすめられている。

同和施策の廃止縮減方針は、自治体財政の厳しさが直接的な契機となっている。前述した北栄町議会有志の動きも、またそれを受け止めた町の動きも、自治体財政の厳しい現状の打開を理由にした転換である。

これまで当然のことと思われてきた事業や制度の廃止、縮減を行政側が提起しやすい、また地区のみなさんに受け入れられやすい環境が生まれているということである。

鳥取市の場合はそれに加えて、部落解放同盟幹部の不正(注1)、予算は組んだものの執行体制が組めないという事情が生じ、2007年度中に団体補助金を減額補正、部落解放同盟鳥取市協議会から減額した予算を返上する、2008年度には当初予算から計上しないという事態に至った。

こうした見直しがすすんでいる大本には、同和地区を特別扱いしなければならない実態がなくなっているということがある(注2)。またそういう事態の進行のなかで地区の人たちにも帰属意識が希薄になっているという現実があるのではないか。

ここには同和地区であるがゆえに生じた格差、差別が解決の方向に確実に向かっていることの反映があるといえる。

 

(注1)部落解放同盟の不正問題に関わる事例の1つを市が議会に配布した資料「部落解放同盟鳥取市協議会への補助金について」(平成21年3月4日付)は次のように述べている。

平成19年6月25日、部落解放同盟鳥取市協議会に対する平成20年度17年度補助金について、同和地区保護者育成事業(3事業:事業費合計149万9千円、うち補助金130万円)のうち、人権コンサート(事業費:53万5千円、補助金50万円)について未実施の可能性があったため、協議会会計責任者について教育長名で鳥取警察署に詐欺罪の告発を行った。この件の捜査の過程で、平成16年度の同和地区保護者育成事業、事業、事業費計160万2千円、補助金144万4千円についても、うち5事業について未実施であることが判明した。

 

(注2)鳥取市は平成19年6月に第4次鳥取市同和対策総合計画(平成19年度〜22年度)を発表しているが、その特徴は、部落であるが故の格差や差別が存在することを示すことができず、逆に、格差是正が達成され差別意識の解消も進んできていることを否定することができないため、同和対策を推進すべき理由づけに苦慮している姿がみえるということである。同計画の記述からいくつか紹介する。

―「生活環境については、各事業の推進により、現在までに周辺地域との格差はおおむね解消されました」、「平成17年度に本市が実施した『同和問題等人権問題に関する市民意識調査』によると、市民の意識は、『人権に対する意識の高まり』『結婚差別意識の解消』の傾向が見られますが、『同和問題を自分自身の問題として取り組む意識の減少』の傾向があるなどまだ十分とは言えない状況があります」、「高校進学率で地区・地区外の格差がほぼ解消されるなど、一定の成果を収めてきました」、「今回初めて、すべての児童・生徒の学力と生活背景別の集計を行ったところ、地区・地区外を問わず、全般的に学力低下の傾向が見られました」、「我が国経済の停滞の影響もあり、同和地区の雇用状況は、依然として厳しい状況が続いており、全市的にも同様な状況にあります」、「子育て家庭への支援や、保護者の教育力の向上は全国的な課題であり、子育て不安への支援、経済的負担の軽減、児童虐待への対応など、子育てしやすい環境づくりに向けた様々な施策を、同和地区のみならず全市に広げて積極的かつ柔軟に取り組む必要があります」等々。

 

(3)「同和教育は人権教育の原点」論の特徴

団体補助金や個人給付事業などの分野で見直しがすすんでいることと比べて、教育・啓発の分野はどうか。行政文書からいくつか紹介する。

「鳥取県人権施策基本方針」(平成16年3月改訂)は、「基本的な考え方」という章の冒頭で次のように記述している。

―「日本国憲法では、人種、信条、性別、社会的身分、門地などによって差別されないとする『法の下の平等』、すべての国民が自由に生きるための『自由権』、また生存権、教育を受ける権利、労働権などの『社会権』などが基本的人権として定められています。

近年では、国、県、市町村、NPO等の様々な取組により、これまで人権として理解されていなかった問題や社会の情報化、技術革新などの社会環境の変化から生じた新たな問題が人権問題として認知されてきています。

さらに国際的には、『第3世代の人権』と呼ばれる開発途上国を中心に主張されてきた民族自決権、発展の権利、環境や資源に対する権利などが近年注目されており、その動向も、あわせて視野に入れておく必要があります。

本県の施策が対象とすべき『人権』は、これらのあらゆる『人権』を視野に入れた幅広いものです。」

しかし次に続く「人権尊重の基本理念」が掲げているのは次の3つの柱である。

第1の柱は「自己実現を追求できる社会の構築」、第2の柱は「差別実態の解消」、第3の柱は「ユニバーサルデザインの推進」。 

第一の柱では、「自己実現が可能となる社会を構築」していくためには「第一に行政が実状、差別実態を正確に把握して人権侵害や差別を支えている社会構造の改廃に取り組まなければならない」とし、「第二に各人は自分の人権のみならず他人の人権についても正しく理解して人権を相互に尊重しあうことが必要」と記述。

第二の柱では、「差別実態の是正はこれまでの取組である程度は進んできましたが、今なお差別の結果としての格差は現存している」とし、不合理な差別実態として「同和地区の人の就労面、教育面や福祉面」などのほか女性、外国人の差別が例示されている。

「鳥取市人権施策基本方針」は、鳥取市が取り組むすべての人権施策についての基本的な考え方や方向性を示すと位置づけられている。同基本方針が掲げる「人権尊重の基本理念」は次の2つである。

(1)差別のない明るい人権尊重都市鳥取市の実現、(2)差別の解消に向けて─である。(1)では、「すべての国民は法の下に平等で、基本的人権の享有を妨げられないことが定められている日本国憲法の理念から、部落差別をはじめとするあらゆる差別は、その存在そのものが許されてはならないものです」と述べている。

(2)では、「わたしたちの社会には、同和問題、女性、障害のある人、子ども、高齢者及び外国人の人権問題、病気にかかわる人の人権問題、個人のプライバシーの保護、そのほかの人権問題などが存在しています。これらの問題の解決のために、わたしたちは、人権教育・啓発に努めるとともにあらゆる差別の解消に取り組んでいく必要があります」と述べている。

 北栄町はどうか。人権同和教育課の資料は、「町民1人ひとりが人権尊重の視点で身の回りをふりかえり、あらゆる差別の現実から学ぶことですべての人が支え合い、安全・安心に暮らせる地域を築く」と記述している。

その他の自治体でも、差別解消、あるいは差別のないまちづくりを取り組みの理念や目的として掲げている。

ここに共通してみられるのは、「差別問題を入り口に、出口も差別問題」というのが、人権教育、人権施策の枠組みだということである。

 

〔2〕人権施策を基本的人権の確立をめざす方向に前進させるための課題は何か

 鳥取県内の自治体が進めている同和行政の見直しを促進し、単なる一般施策への移行にとどまらないで同和行政の終結宣言まで進め、人権教育・人権施策の取り組みを、憲法が国民に保障する基本的人権の確立をめざす方向に前進させるための課題は何か。

 一つは「社会問題としての同和問題が解決された、部落差別が解消された」とはどんな状態のことを言うのか、国と地方、国民あげて取り組んでどこまで到達したのか、を明らかにし行政、国民の共通認識にすることであり、二つは、差別問題に限定する同和教育の枠組みを乗り越え、憲法の基本的人権全体を視野に入れた人権確立の新たな取り組みに挑戦することである。

 

(1)「同和問題の解決」の指標と到達点を明らかにすること、共通認識にすること

鳥取県の「今後の同和対策のあり方」(平成14年2月)という文書は、「差別がある限り、同和問題解決のために必要な施策について適切に対応していく」、「今後も同和行政を積極的に推進していく」と断言している(注3)。

鳥取市の第4次同和対策総合計画は、「同和問題の基本認識」の章で「差別意識も残っており、部落差別事象も発生しており、同和問題が解決されたとはいえない状況にあり」と記述している(注4)。また、他の自治体の方針書も同様の記述となっている。

「差別は残っている」、「差別はまだある」、差別があるかぎり同和対策は必要である―ここには40年近くにわたり国と地方で16兆円を超える税金を投入し、膨大な人的エネルギーを費やした同和施策の成果に対する確信は見えない。

一般に、行政施策について施策が目標とするもの、その成果や到達について明らかにすべきであるが、特別対策と位置付けてきた同和問題は、格差解消・差別解消をかかげながら、施策の目標である「部落差別を解決した状態」とはどういう状態を言うのか、特別対策の終着駅はどこなのかについて、住民が納得できる客観的な指標、基準というべきものを行政文書は全く示していない。示すべきであるという問題意識すらうかがえない。

 差別意識や差別事象(何を差別とし、差別事象とするかの検証が必要だが)は、一挙に100%解決するものではない。また、内心の状態である意識について、差別意識の有無を誰が判断するのか、そもそも判断できるのかという、自由権の要をなす「内心の自由」の保障にもかかわる問題を生じることを考えるなら、「差別意識が残っている」かどうかを行政施策の指標にすべきでないことは明らかである。

 部落問題、部落差別は国民あげて解決に取り組む課題だとされ、特別対策を講じてきたのは、部落問題は国をあげて解決に努めることが必要な「深刻な社会問題」であるという認識に立っていたからである。そのことが確認できるなら、その認識にたってどこまで解決に向かって進んだのかということが肝心な点であり、到達を明らかにするうえでは解決された状態とはどんな状態をいうのか―その指標が大事である。

住民の差別意識の解消を取り組みの目標にしているにもかかわらず、どんな状態になったら解決したのかということを明らかにしないまま今日まで経過したことは、一種の思考停止状態にあったと言っても過言ではない。 

施策の達成目標と到達が明らかでなければ何が「必要な施策」なのか見えてこない。いつ終結するのか、まったく展望が見えてこない。

この点を明らかにし、行政住民の共通認識にすることが、見直しをさらに促進するための第1の課題である。

 

(注3)鳥取県が同和行政終結の見通しを持っていないことは、引用した文書中の「同和行政の基本的方向」の次のような記述からも明らかである。

「同和行政とは、部落差別をなくするためのいっさいの行政を意味していることから、今後引き続き『特別対策』で対応するものも、部落差別の解決のために『一般対策』を活用するものも、いずれも同和行政であり、同和対策事業となる。」

 

(注4)引用した記述の前段は次のようになっている。

「同和問題解決のため同和行政に積極的に取り組んできました。その結果、生活環境はおおむね整備され、同和地区住民の生活の安定・向上などに一定の成果をあげるとともに、差別意識の解消も進んできています。しかしながら、同和問題の解決に向けた実態等調査などによると、差別の結果から生じる同和地区における教育の課題、就労の課題など解決すべき課題が残されているとともに、差別意識も残っており……」と続く。

教育の課題とは、児童・生徒の低学力であるが、これは同和地区の児童・生徒だけの問題ではないこと、すなわち部落差別ゆえの課題ではないことに前述の(注1)で紹介した同総合計画自身が言及している。就労の課題についても全市的に同様な状況だと同総合計画自身が認めている。

 

(2)「差別を入口に、出口も差別」という同和教育の枠組みを乗り越えること

県内市町村の同和問題、人権施策・人権教育の担当者と懇談した際、多くところで「同和教育は人権教育の原点」「同和問題は人権問題の原点」という話を聞いた。自治体の部署の名称から「同和」が消え、「人権」を呼称に使用するところが増えているが、人権同和教育課というように部署の名称に「同和」を付しているのは、同和教育が人権教育の原点であることを忘れないためにそうしているのだという話もあった。

また、同和問題は人権問題へのアプローチの一つだという議論もよく耳にした。

基本的人権についての認識を深めるために、具体的な人権問題を取り上げ、それを「入口」に人権教育に取り組むことは学習方法として大切なことであり、その一つとして同和問題を取り上げることはありうる。しかし、取り組みの目標を「差別のない明るいまちの実現」、「差別解消」においているということは、逆に言えば基本的人権の全面的な実現を目標にはすえていない、ことを意味している(注5)。

差別問題に限定してきたこれまでの同和教育の枠組みを乗り越えることが、憲法が保障している基本的人権の全体を視野に入れた人権教育、人権施策に転換をしていくうえで重要な課題となる。

そのためには、人権の課題を、「人を差別してはならない」、あるいは「偏見をなくそう」という「差別」論に限定することがもたらす弊害、問題点に目を向けることが大事である。

今年5月30日、31日に鳥取市で開催した全国人権連主催の第五回地域人権問題全国研究集会は、メインスローガンに貧困をなくすことを掲げ、貧困を人権の角度から考えようという分科会も設置した。その他にも住民の手で暮らしやすい地域づくりを進めようと議論した分科会、権利としての教育を考える分科会、言論・表現の自由を考える分科会を設置した。研究集会で取り上げ議論した問題は、差別問題という角度からの接近では視野に入ってこない。

働く貧困層、ホームレス問題など貧困が広がり生きづらくなっているなか、憲法25条が保障する生存権を守る取り組みも、「差別をなくす」という角度からだけでは視野に入ってこない。人間をモノのように使い捨てにする非正規労働をなくし、正社員が当たり前という状態をつくること、サービス残業など不払い労働をただすことなど、働く者の権利を確立する課題も差別をなくすという議論では視野に入ってこないことは明らかである。(注6)

これまでの同和教育、人権教育が進めてきた、差別を「入り口」に、「出口」も差別で終わる、「差別をなくしましょう」、「差別してはいけません」という議論では、基本的人権の全体をとらえることはできないということを、重ねて協調したい。

前出の「鳥取県人権施策基本方針」のなかに、「これまで人権として理解されてなかった問題等々、新たな問題が人権問題として認知されてきています」という記述がある。この部分は、憲法の基本的人権の規定は、国民のさまざまな取り組みや要求の発展のなかから、新しい人権が創りだされてきたことを述べている。しかし、差別問題に限定した考え方や議論は、憲法の人権規定が本来持っている豊かな内容を活かし発展させる方向に逆行する。この点も問題点の一つである。

人権問題を差別問題に限定する議論のもう一つ重大な問題点は、人権侵害、人権問題を個人対個人の関係に閉じこめてしまうことである。

憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」─と規定している。基本的人権は国家権力や経済的な権力とたたかって獲得してきたという歴史をふまえた規定であるが、基本的人権の歴史的な視点が、「差別」論からは抜け落ちてしまっている。この点は憲法の基本的人権を考えるうえでは、非常に重大な問題点である。行政の示している基本方針のなかには、行政、あるいは大きな力を持っている経済的な権力との関係への言及は見られない。

 

(注5)鳥取県の文書「今後の同和対策のあり方」は、「同和行政の基本的方向」の最後を次のような記述で結んでいる。

 「同和行政は人権行政の原点であり、重要な柱である。(中略)本県では、今後、これまでの同和行政の成果を踏まえ、これをさまざまな差別問題に対する人権行政へと発展させ、一層の推進を図るものである。」

 

(注6)鳥取県教育委員会が定めた「鳥取県人権教育基本方針」(平成16年11月)は、「人権の原則」に言及し次のように述べている。

 「日本国憲法では、人種、信条、性別、社会的身分、門地などによって差別されないとする『法の下の平等』、すべての国民が自由に生きるための『自由権』、また生存権、教育を受ける権利、労働権などの『社会権』などが基本的人権として定められていますが、私たちは、自分がどのような『権利』を持っているのか、自覚しているでしょうか。

 日本国憲法とともにこれらの人権諸条約などの国際基準に保障されている具体的諸権利は、私たちが日常の暮らしの中に生起する人権侵害を読みとる『判断基準』とすべきものです。」

 しかし、個別の人権問題にかかわる人権教育推進のための基本的なあり方や方向性を示すとしている「各人権問題にかかわる教育の推進指針」(同基本方針第4章)で取り上げている課題は次の通りである。

 「同和」、「女性の人権」、「障害者の人権」、「子どもの人権」、「高齢者の人権」、「外国人の人権」、「病気にかかわる人の人権」、「個人のプライバシーの保護」。

 

〔終わりに〕

基本的人権、あるいは人権というのは「鳥取県人権施策基本方針」が明確に述べているように、日本国憲法が規定する基本的人権の全体であるということを、私たちはあらためて抑えておく必要がある。

同和教育によって人権の取り組み、人権問題への認識が深まった、あるいは目を開かれたという声がある。事実そうした経緯をたどった方もあるであろうし、そのことを非難するものではない。

「同和対策審議会答申」が、部落問題を「もっとも深刻にして重大な社会問題である」と規定したのが1965年8月。答申をふまえて同和対策事業特別措置法が制定、施行されたのが1969年7月。以来、行政、国民あげてその解決に取り組むところとなり、税金と人的エネルギーを投入してきた。そうした取り組みの反映として、人権に対する認識や取り組みが前進したことは事実であるが、「法の下の平等」をはじめとする基本的人権を初めて日本国民に保障した日本国憲法は、1946年に公布されたことも事実である。

同和問題に取り組むことによってはじめて人権課題に目を開かれたということは、逆に言えば、憲法が掲げている基本的人権にきちんと私たちが目を向けていなかった、国民の目の向け方が足りなかったということを意味している。

いまあらためて、日本国憲法が定める基本的人権を、国づくり、地域づくり、人づくりの基本にすえていく努力が問われている、と考える。憲法の基本的人権の内容を正面からきちんと学び、日本社会に確立するために不断に努力することが、私たちの責務ではないか。

憲法の精神をいかした人権施策、人権教育の実践は、これからの挑戦の課題である。新しい人権教育のプログラム、カリキュラムなどもこれから挑戦して明らかにしていく内容である。

日本国憲法が国民に保障する基本的人権を確立することを共通の目標に、行政と住民がともに努力していくことを、私たち人権連は呼びかけていきたい。

 

 

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鳥取県における同和施策―見直しの現状と終結への課題